MUSICAL FEATURES
Xaoc Devices Minskは、デジタルとアナログの処理を組み合わせることでステレオ信号ペアの高度なMid/Side操作を提供する、ハイブリッドのステレオイメージ・プロセッサーです。聴覚イメージの奥行きと広さに影響する、ミッドとサイドの両成分を個別に扱うことができる本機は、ステレオ幅をノブとCVの両方でコントロールできるほか、既存のステレオイメージを強調したり、ステレオまたはモノラルの入力ソースに基づく擬似的なステレオイメージを作成できる2次元のエフェクトも備えます。
- ステレオイメージ操作ツール
- Mid/Side処理
- モノラル信号から擬似ステレオ信号を作成
- ステレオ・ディメンション・エンハンスメント
- マニュアルおよびCVによるステレオ幅のコントロール
- Side成分のローカット
- ステレオイメージを視覚化する6-LEDのインディケータ
HOW TO USE?
Interface
マウスオーバーで各部の説明が表示されます
Mid/Side処理
M/S処理の原理はシンプルで、M信号は左右の信号の和をスケーリングして得られ、S信号はそれらの差をスケーリングして得られるというものです。同一でありながら位相がずれている成分同士を正確にキャンセルするには精度が必要です。興味深いことに、同じ和と差をMとSに適用した場合、全ての処理が元に戻ります。これにより、最終的にLRに戻る事ができます。M/S表現は、中央に配置された音と軸外の音を魔法のように分離するものではありません。S信号はオーディオ信号のうち、左右のチャンネルで逆位相となり、モノラルになった時に打ち消される成分のみを含みます。これは主にステレオ信号のうち、モノラル音声と区別される部分を表します。サウンドが極端にパンニングされている場合、つまり左右どちらかのチャンネルにしか存在しない場合は、Mチャンネルに50%、Sチャンネルに50%の割合で等分されます。本機では、MidとSideの情報を分けることでダイナミクス処理やイコライジング等のエフェクトを聴覚イメージの奥行きと幅に独立して適用することが可能です。また、このような特別な効果だけでなく、本機の重要な利点はMid信号とSide信号を個別に、あるいは完全に異なる方法で処理することで、イメージ全体のバランスと対称性を保つことができる事です。
次元エフェクト
Minskは、オーディオ信号に立体感を付加するための2つの方法を備えており、既存のステレオペアを強調する方法と、LEFT/MONO入力にパッチされたモノラル信号から擬似的なステレオイメージを作成する方法を使用できます。Haas効果に基づくDIMENSION Aは、左右のチャンネル間に短く、とても緩やかに変化するディレイを導入します。このようなディレイの変化は、ステレオフィールド内の音源を特定する際に両耳間時間差を頼る人間の聴覚システムを混乱させます。実際には、一定の動きを持つステレオイメージの繊細なアニメーションに変換されます。DIMENSION Bは、多くのリバーブ空間で見られる初期反射に基づいています。複数のマイクロフォンを使用して音響シーンを捉える録音技術では、広さの認識は主に壁の反射の有無に依存します。本機では、アルゴリズム・リバーブのERネットワークを使ってこの効果をシミュレートしており、出力はSide信号とミックスされ、IMAGEコントロールで広さの程度を調整します。
ローカット・フィルター(Side HPF)
軸外にあるローエンド成分の除去は、レコードのカッティング等でしばしば求められる処理であり、本機ではS成分にハイパスフィルターを適用することでこの処理を容易にします。SIDE HPFスイッチには300, 50, OFFの3段階の設定があり、300Hzでは12dB/Octのフィルター・スロープを、50Hzの設定ではより急峻な24dB/Octのスロープを採用します。なお、このフィルターはM成分には影響しないため、よほど風変わりなミックスでない限りは音色バランスへの影響は僅かなものとなります。
ステレオイメージ幅のコントロール
IMAGEノブと付随するCV入力は、MとSの両成分に可変ゲインを適用する事で、ステレオイメージの幅をコントロールします。CVの入力が無く、ノブがMID+SIDEとラベルされた中央位置の時、このコントロールは信号に影響しません。ノブを左に回すことでS成分の振幅が減少、知覚できるイメージをモノラル寄りに狭めます。ノブを中央より右に回すことでS成分の振幅を増加させると同時にM成分のゲインを減少させ、信号全体のエネルギーを維持します。これにより、ステレオイメージを人工的に広げると同時にイメージの中央に空間を作成します。2 SIDEのラベルがある最大値にノブを設定した場合ではM成分は無くS成分だけとなり、LとRの信号の位相が完全にずれた状態になります。このような信号はモノラル再生に対応しておらず、多くのPAシステムにおいて不快なサウンドになるため、この設定は慎重に行う必要があります。IMAGE CV入力にCVがパッチされている場合、IMAGEノブはオフセットとして機能します。IMAGEノブが中央位置の時、フルレンジのモジュレーションにはバイポーラーの±5V信号が必要となります。また、ノブが最小値のMIDに設定されている場合、バイポーラー変調によってS成分はゼロを超えて変化するため、ステレオイメージのミラーリング(LR反転)が実行されます。
対称性のコントロール
最終ステレオ出力が傾いてしまった場合は、POSITIONノブを使って左右のバランスをマニュアルで調整する事ができます。精度を上げるために、動作範囲は+2/-12dBに限定されています。
ゴニオメーター
縦、横、斜めに配置された6つのLEDから成るステレオイメージ・インディケータは、信号の潜在的な問題を確認する上で重要な役割を担います。適切なステレオ信号の場合、6つのLEDは全て点灯または点滅します。水平方向のLEDペアが暗いままの場合、Sの重要な成分が存在しない(信号がモノ/ステレオイメージがとても狭い)ことを意味します。垂直方向の2つのLEDが暗い場合は、チャンネル間の位相がずれていることを意味します。対角線状の2つの黄色LEDは、最終的なLRの出力(対称性調整後)の強度を示します。
信号レベル
一般的に、ユーロラック機器は十分なヘッドルームを持たないため、高振幅の2つの信号をミキシングした際にクリップ・ディストーションが発生する場合があります。Minskは、L/RからM/Sへの変換を1/2スケーリングで実行することで安全性を保証しますが、IMAGEコントロールはS成分に最大で2倍のゲインを導入するため注意が必要です。これは、元のL and/or R信号が10Vppを超える位相ずれを起こしている場合、ディストーションの原因となります。一方、M/SからL/Rへの変換ではスケーリングは行いません。この部分は完全なアナログ回路であり、それぞれの入力にパッチされたMとSの信号が10Vppを超えた場合はクリップする可能性があります。また、極端な対称性の補正を行うと、追加ゲインによるディストーションが発生する場合があります。入力信号と出力信号の振幅に常に注意することで、オーディオ品質を維持する事ができます。