MUSICAL FEATURES
Quasarは、バイノーラル・アルゴリズムを用いて3Dのサウンド・イメージを作成できる、2チャンネルのオーディオ・ミキサーです。Quasar 1とQuasar 2と呼ばれる2つのポジションを使って、あらゆる角度、高さ、および距離での仮想的な配置と移動を実行可能で、ルーム・リバーブで距離感を補正することもできます。Input 1およびInput 2へのオーディオ信号は、内部のマトリクス・ミキサーを介して2つのポジション(Quasar)のどちらか、または両方へと柔軟にルーティングできます。各ポジションの座標は手動での設定、または内蔵LFOや外部CVを介してコントロールすることが可能です。例えば、リスナーの周りを周回し、上や下、前や後ろから近づいたり遠ざかったりするサウンドを作成できます。また、音響処理をせずに信号を通過させるCenterポジションをルーティング先に指定することで、Dry/Wetミックスを作成することができます。
- 2つのモノラル入力
- ステレオ出力(2つの単一ジャックとステレオ・ヘッドフォン出力)
- 2つのCV入力
- 24Bit 48kHzの入出力/32Bitの内部処理
- 高さ、角度、距離の3つ次元における動的な3Dポジショニング
- 優れた定位感を提供するルーム・リバーブ
- 柔軟にルーティングできる内蔵LFO
- 2系統の外部CVはCVごとに全パラメータの複数のアサイン先にルーティング可能
HOW TO USE
Interface
マウスオーバーで各部の説明が表示されます
Signalflow
メーカーのページでは、Quasarの信号経路を示した下の図を高画質で確認できます。
Quasarは、~IN1と~IN2の2つの入力ジャックを介してオーディオ信号を受け取ります。各信号の入力ゲインはIN1とIN2、2つの独立したノブで設定可能です。入力信号はそれぞれ、独立したHigh/Low Passフィルターと内部のボリューム・コントロールを介してQuasar 1、Quasar 2、およびCenterポジションへと分配されます。この機能はマトリクス・ミキサーに等しいものです。Quasar 1と2は、各々のモノラル入力をバイノーラルのステレオ信号に変換します。サウンドの発生を予期する座標とリバーブのパラメータ、および内部LFOのモジュレーションは自在に調整することが可能です。また、入力信号はバイノーラル処理なしにHigh/Low Passフィルターとレベル調整のみを経て左右の出力チャンネルにミックスされます。ここで知覚できるポジションはセンターに相当し、サウンドは頭の中から聞こえてくるようなものとなります。Quasar 1、Quasar 2、およびセンター位置のCNTRのボリュームのミキシングは、モジュール最上部にある3つのノブで調整します。これらの和は、OUT L/Rの出力ジャック、およびPHONヘッドフォン出力へとルーティングされ、マスター出力とヘッドフォン出力のレベルはそれぞれ独立したコントロールでレベル調整できます。
Volume meters
メインメニューでは、PARAエンコーダーを操作してサブメニューのひとつを選択し、クリックすることでそれぞれにアクセスできます。大きなエンコーダーの周りに実装された2つのLEDリングはそれぞれ、左がゲイン・コントロール後のオーディオ入力、右はOUT/PHONコントロール前のオーディオ出力のレベル・メーターとして機能します。
信号の入出力レベルが常に青色の範囲になるように調整します。緑色の範囲に留まるような、著しく低いレベル設定では不要なノイズがより多く発生する場合があります。IN 1/2のGAINノブでそれぞれの入力レベルを適切に調整します。出力レベルの調整にはQSR1, QSR2, CNTRノブを使用します。また、出力レベルのバランスを最適化するために、内蔵のVolumeパラメータも利用できます。入出力のレベルが高すぎる場合、レベル・メーターは赤色のエリアに到達します。これは信号のクリッピング、またはディストーションの原因となります。
Coordinate system
Quasarは、極座標で動作します。 これは仮想音源の位置が水平面内の角度(Azimuth)、垂直面内の角度(Elevation)、およびリスナーの頭部までの距離で特定されることを意味します。極座標は、XYZ軸で位置を特定する直交座標(デカルト座標)の代替となるものです。Quasarのアルゴリズムが採用する極座標は音質を向上させ、音源をより自然な方法でリスナーの周りに旋回させることができます。
Menu structure
Qarsarのメニュー構造は分かりやすく設計されており、各メニューで示されるLEDリングの色も異なるため、 モジュールを理解するにつれて視覚面でも素早く操作することができます。ディスプレイには設定したパラメータ値が常に表示され、LEDリングはその値に内蔵LFOや外部CVによるモジュレーションを加えた値が示されます。モジュレーションを使用した場合、ディスプレイに一定の数値が表示されている間、ハイライトされたLEDが移動します。
Quasar 1/2 – Height & Angle
左のエンコーダーは、仰角を-30.0°~+45.0°の範囲で変化させることで、音源の高さを決定します。これにより、サウンドが上下から聴こえてくる効果を作成し、青緑色のLEDが仰角を視覚的に示します。リングの上半分のハイライトされたLEDは正極の値を示し、サウンドが上から聴こえてくることを意味します。一方、リングの下側でハイライトされたLEDは不極の値を示すもので、サウンドが下から聴こえてくることを意味します。
方位角の設定には、右のエンコーダーを使用します。これはリスナーの頭部の左右180.0°の範囲内で設定することが可能です。ここでの0.0°はサウンドが前方から直接聴こえてくることを意味します。この場合、LEDのハイライトはリングの最上部に位置します。
LEDのハイライトがリングの下側になった場合は、サウンドは背後から聴こえてきます。ハイライトがリングの左または右にある場合は、サウンドがそれぞれ左または右から聴こえます。LEDリングは、リスナーを上から見たときに音源が移動できる可能性がある経路を示していると解釈できます。方位角については、自動モードを有効化することもできます。自動ローテーションのon/offを切り替えるには、PARAエンコーダーをクリックします。ディスプレイには、回転速度が1分あたりの回転数(/m)で表示されます。LEDリングは、方位角の位置を絶対値で表示し続けます。
Quasar 1/2 – Distance & Room reverb amount
このメニューは、左側のQuasarの仮想位置の距離、および右側のエミュレートされた室内の残響音量を設定するために使用します。距離は20.0センチメートルから10.0メートルまでの範囲で、リバーブ量は0%から100%までの間となります。部屋の残響は、人間の聴覚による距離測定の重要な情報となるため、信号に若干のリバーブを適用することで距離判定が改善する場合があります。
Quasar 1/2 – Room damping & Room size
このメニューでは、リバーブの2つのパラメータを設定します。左側はリバーブ・テイルの高周波の減衰を定義するRoom dampingを、右側はリバーブ・テイルの長さを定義するRoom sizeの調整に使用します。どちらも設定幅は0%から100%となります。
Quasar 1/2 -LFO waveform & LFO speed
このメニューでは、Quasarの位置座標である高さ、角度、距離の変調に使用する内部LFOを設定します。下のイメージは、利用可能なLFO波形の概要です。
この他にも、以下のようなワンショットのサイクルで動作する波形があり、これらはCV1またはCV2へのコントロール電圧によってトリガーされる必要があります。
また、これらのワンショットの波形を起動するには、メニューの’CV MAP’からLFO triggerをCVのアサイン先として設定する必要があります。
メニューの右側でLFOの速度を設定します。設定可能な範囲は毎分-300.0から+300.0の周期で、これは最大±5Hzに相当します。サウンドを定位させるには緩やかなポジション移動が効果的ですが、LFOの値を大きくすることでトレモロなどの興味深い効果が得られます。LFOは外部CVを介してリトリガーすることが可能で、実行するには対応するCV MAPでLFO triggerをターゲットとして設定します。
Quasar 1/2 – LFO Amt Height & LFO Amt Angle
続くメニューでは、LFOの適用量をQuasarの高さと角度の座標に設定します。正と負の値を±100.0%の範囲で適用可能で、LFOの値はマニュアルで設定した座標の値に加算または減算されます。値の変更は、対応する’Height | Angle’メニューのLEDリングで示されます。自動ローテーションが有効の時でも、LFOで角度(azimuth)をモジュレートすることができます。これは音源が水平面内を自動ローテーションの速度で移動し、さらにLFOが移動する速度を変更することを意味します。
Quasar 1/2 – LFO Amt Distance & Actions
3つ目の座標であるDistance(距離)パラメータもまた、LFOで変調することができます。ここでも、適用量は±100.0%の範囲で設定します。メニューの右側では、いくつかの特別な動作(Action)をエンコーダーで選択できます。選択したActionを実行するにはエンコーダーをクリックします。以下の動作を利用できます。
- LFO Reset: LFOをリセットします。速度と適用量の値は0.0に、波形はサイン波に設定されます。
- LFO Copy to other QSR: LFOのパラメータ(波形、速度、適用量)を他方のQuasarにコピーします。
- LFO/Pos Copy to other QSR: LFOの値と座標の値(高さ、角度、距離)を他方のQuasarにコピーします。
- LFO/Pos Mirror to other QSR: コピーと同様ですが、角度は左から右、または右から左に変更されます。また、角度へのLFO適用量の極性が反転されます。
- All Copy to other QSR: ポジション、LFO、部屋のパラメータを含むQuasar全体をコピーします。
- All Mirror to other QSR: コピーと同様ですが、角度は左から右、または右から左に変更されます。また、角度へのLFO適用量の極性が反転されます。
Input 1/2 – Filter & Volume
入力するオーディオ信号は、Quasar1、 Quasar2、および中央位置(CNTR)へと柔軟にルーティングできます。また、ボリュームだけでなく、先行するローパスまたはハイパスフィルターも設定できます。IN1またはIN2メニューに入り、PARAエンコーダーで利用可能なターゲットをブラウズできます。
CV 1/2 MAP – Target & Amount
入力CV1とCV2は、異なるアサイン先に柔軟にルーティング可能で、各CVごとに4つのターゲットを利用できます。CV1 MAPまたはCV2 MAPメニューに入り、PARAエンコーダーで利用可能なターゲット1〜4をブラウズできます。左の大きなエンコーダーでターゲットを選択し、右のエンコーダーで±100%までの値を設定します。外部CVの電圧は、±5.0Vの範囲が理想的です。選択したアサイン先がQSR1またはQSR2のLFOトリガーに設定されている場合、コントロール電圧は0V〜+5Vの正極のゲート/トリガー電圧として解釈されます。左のエンコーダーを左に絞り切ると、Amountは自動的に0.0%に設定されます。これにより、既存のマッピングを素早くリセットすることができます。
MORE
メインメニュー内のMOREメニューページからは、Quasarが提供するいくつかの追加オプションにアクセスすることができます。
MORE – Save Preset
すべての設定はプリセットとして保存することが可能で、いつでも呼び出すことができます。保存するには、メニューから’Save Preset’を選択します。続く画面では、PARAエンコーダーを使って128のプリセット用スロットをリストから選びます。既に保存されたプリセットを含むスロットを選択した場合、そのプリセットは上書きされます。次の画面では、プリセット名を入力します。右のエンコーダー、またはPARAエンコーダーで文字を横方向にスクロール、左のエンコーダーで文字を縦方向にスクロールできます。文字を入力するには、3つのエンコーダーのいずれかをクリックします。最後の文字は、アルファベット一覧の矢印を選択することで消去できます。入力したプリセット名を確定するには、一覧のokキーをクリックします。
TIP: Quasarは、パワーサイクル間の一時的な設定を自動的に保持します。
MORE – Load Preset
プリセットはリストから呼び出すことができます。Load PresetメニューでPARAエンコーダーを使って任意のプリセットを選択し、エンコーダーをクリックしてプリセットを読み込みます。
MORE – Bypass
バイパス機能を利用することで、未処理の入力信号を参照することができます。メニューに入ると、入力IN1とIN2は、サウンド処理なしですぐに出力にルーティングされます。PARAエンコーダーを使って、IN1とIN2を左右両方の出力にルーティングするか、IN1を左チャンネルに、IN2を右チャンネルにそれぞれルーティングするかを選択します。後者のオプションは、IN1が左チャンネル、IN2が右チャンネルといったステレオ信号が入力されている場合に適しています。
MORE – Ear Type
Quasarで処理したサウンドをどれだけ正確に聞き分けられるかは、人によって異なります。空間聴覚では、胴、頭部、耳の形が音の位置を特定する上で重要な役割を果たしますが、これらは人によって異なります。この理由から、QuasarではPARAエンコーダーで選択できるHuman, Hobbit, Yoda, Bunny, Elephantの5つのEar Typeを提供します。Ear Typeの種類によって、リスニング位置による周波数応答の変化量が異なります。周波数スペクトル上の影響は’Human’が最も少なく、’Elephant’が最も大きくなります。
選択したタイプが強いほど周波数スペクトルの変化が大きくなります。これは予期しない過剰な強調を引き起こす可能性があるため、より弱いタイプが好まれる傾向があります。これらの差は、高さの認識精度と前後方向の識別性において最も顕著に現れます。一般的に、仮想音源が正確な中央位置にあるよりも、頭部の左右どちらかにある方が優れた定位能力を示します。
MORE – Brightness
このオプションでは、LEDリングの全体的な明るさを調整できます。3つのエンコーダーのいずれかを使って明るさを変更し、エンコーダーをクリックして設定を完了します。変更せずに終了するには、BACKボタンをクリックします。この明るさの設定はモジュールに記憶され、次回の電源投入時に読み込まれます。
MORE- CV Calibration
モジュールの各CV入力は工場出荷時に校正されています。パワーサプライや温度の違いにより、CVのケーブルがパッチされていない状態でCVの動作を確認した場合、再校正が必要な場合があります。キャリブレーション(校正)は、CV入力のデフォルトのゼロレベルを測定し、リセットするものです。これを実行するには、メニューに入って画面上の指示に従います(ケーブルをすべて取り外し、PARAを押して校正を開始する)。測定後、Quasarは画面に2つのリファレンス電圧を示します。±50.0の間が通常値となります。