MUSICAL FEATURES
Shuffling Clock Multiplier +は、8つのゲート出力と複雑なビート操作機能を備える定番のクロック・マルチプライヤー’ SCM ‘のアップデート版です。オリジナル版よりもタイトなタイミングでクロックの乗算とシフトを実行できる本機では、SCM Breakoutモジュールの機能も一台に統合されました。ブレークアウト部分のCV入力により、出力に様々な変調を行うことができ、本体からのゲートをパッチしてクリエイティブなリズムを生み出すことも可能です。
- 8つのクロック出力は着信クロックを2倍から8倍で乗算
- Shuffle, Slip, Skip, Rotateを使った複雑なリズムを作成
- CV入力を備える5つのノブ
- Rotate: 乗算結果を出力するジャックを変更
- Slip: 特定のパルスが遅延する時間をコントロール
- Shuffle: Slipに影響を受けるパルスを選択
- Skip: パターン内の特定のパルスをミュート
- Pulse Width: 出力パルスの幅をコントロール
- Slip/Shuffle/SkipのカウンターをトリガーでリセットするResync入力
- すべての出力を停止するMuteボタンとゲート入力
- 最後に保存されたテンポを電源投入時に復元するSave Clock機能
- パワーバス経由で外部モジュールからテンポを受信できるClock Busジャンパー
- 外部クロックなしでモジュールを作動させるFree Runジャンパー
- LEDの明るさを変更できるトリムポット
HOW TO USE
コントロール詳細
Clock Inputジャック
最低2.5Vの上昇エッジでトリガーします。入力されたクロック信号に合わせてLEDが点滅します。
Clock Outputジャック
ゲート信号を生成する8つの出力ジャックは、エンヴェロープまたはファンクション・ジェネレータ、ドラムモジュール、シーケンサー、 サンプラーなど、トリガーまたはゲート、クロック信号を受け付ける様々なユーロラック・モジュールに使用できる他、VCAを開いたり、 レゾナント・フィルターの’ Ping ‘用途に、または原始的なlo-fiのオーディオ信号として使用することができます。
‘ x ‘出力ジャック(x1, x2, x8)は、3つの安定型クロック出力で、これらはSlip/Shuffle/Skip パラメータの影響を受けません。各ジャックに付随するLEDは、出力クロック信号に合わせて青色に点滅します。
‘ S ‘出力ジャック(S3, S4, S5, S6, S8)は、Slip/Shuffle/Skipの影響を受ける5つのクロック出力で、それぞれが 入力クロック周波数の乗算値に基づいた信号を生成します(それぞれx3, x4, x5, x6, x8)。各ジャックに付随するLEDは、出力クロック信号に 合わせて緑色に点滅します。
パラメータ詳細
Resync
このジャックに2.5V以上のトリガーを入力することで、ビートパターンを再スタートします。 ビートパターンは、Skip, Slip, Shuffleの各パラメータによって確立されます。 Resyncは、典型的な”リセット”とは異なります。 クロック・マルチプライヤーには、専用のリセット入力ジャックがありません。これは、クロックの入力パルス毎にリセットされるためであり、 メインの’ In ‘ジャックがクロックを受信するたびにパターンが始めからやり直されることを意味します。 SCM PlusのResyncジャックは、ビートパターンの位相をシフトさせることで、クロックパルス間の中間でパターンを(再)スタートさせることができます。
パッチ例
この機能を簡単に確認する方法は、クロック’ In ‘ジャックに非常に遅いクロックをパッチします(パルス間で4秒など)。 続いてSkip, Slip, Shuffleをそれぞれ適当にランダムな値に設定し、マニュアル・ゲートをResyncジャックに接続します。S8ジャックをモニターし、ビートパターンを覚えます。Resyncをトリガーすることで、ビートパターンが即座に再スタートされるのが確認できます。’ In ‘ジャックに次のクロックパルスが送られることで自身を通常の動作に再同期させるため、新しいビートパターンが演奏されるのは1小節未満となります。
Rotate
Rotateジャックとノブは、すべての出力ジャックのクロックの倍率を回転させます。回転なしの場合(ノブ最小値でCVの適用なし)、’ x1 ‘ジャックは入力クロックと等倍のクロックを出力、’ x2 ‘ジャックは入力クロックのテンポの2倍速のクロックを、’ S3 ‘ジャックは入力テンポの3倍速に基づくクロックを、最大の’ x8 ‘ジャックでは、入力テンポの8倍速のクロックを出力します。ノブを操作する、またはジャックにCVを入力することで回転が適用されると、各ジャックの乗算量が下にシフトし、1倍の後は8倍に戻ります。 したがって、ノブ値を少し上げた場合、’ x1 ‘は8倍のクロックを出力し、’ x2 ‘は等倍を、’ S3 ‘は2倍のテンポに基づくクロックを、最大の’ x8 ‘は7倍のクロックを出力します。 回転の量が増えると、’ x1 ‘は7倍を、’ x2 ‘は8倍を、’ S3 ‘は等倍を出力し、回転量が最大の場合では、’ x1 ‘が2倍を、’ x2 ‘は3倍を、’ x8 ‘は等倍を出力することになります。
ジャックにパッチがない場合は、ノブで回転の量を設定します。ジャックにケーブルがパッチされた場合は、ノブはジャックへのCV信号のアッテネータとなります。この場合、ノブを最小値にすることでジャックへのCV信号を完全に減衰できます。ノブを最大値に設定した場合は、3VのCV信号で最大の回転量を得ることができます。
なお、適用された回転量に関係なく、’ x ‘ジャックは常に安定したクロックを、’ S ‘ジャックは常にSlip/Shuffle/Skipが適用された信号を出力します。
Slip
Slipノブとジャックは、すべての’ n ‘ビートを時間的に先に移動させます。’ n ‘の値はShuffleパラメータで設定し、各ビートが遅れる量はSlipパラメータで設定します。例えば’ n=2 ‘の場合は、ビート2, 4, 6といった、1つおきのビートが遅れて演奏されます。
Slipがゼロの設定(ノブ値最小、CV入力なし)では、’ S ‘出力ジャックもスリップやシャッフルのない、’ x ‘ 出力ジャックと同様に動作します(Skipによりビートが間引かれる可能性はあります)。ノブ値を上げるか、ジャックにCVを送ってSlipの値を上げることで、いくつかのビートがわずかに遅れて演奏されます。ノブ値を最大にするか、最大のCVを送った場合、いくつかのビートは後続のビートの直前に演奏されます。
ジャックにパッチがない場合は、ノブでスリップの量を設定します。ジャックにケーブルがパッチされた場合は、ノブはCV信号のアッテネータとなります。この場合、ノブを最小値にするとCVは適用されず、最大値にした場合は3.3Vの信号で最大のスリップ量を得ることができます。
モジュール内部には、各ビートをスリップさせるか否かを追跡するカウンターがあります。このカウンターは、各入力パルス毎に自身をリセットします。例えば、モジュールに安定したクロックが入力されており、ビートをひとつおきにスリップさせた場合、S5出力ジャックのビート2と4が遅れて演奏されます。ビート6が演奏される前に入力クロックが着信した場合はカウンターがリセットされ、ビート6がビート1になり、ビート1がオンタイムに、ビート7と9が遅れることになります。Resyncジャックは、このカウンターをリセットします。
Note: パルス幅(PW)は、どの程度スリップが発生するかに影響します。パルス幅は著しく広い場合、ビートの終点と次のビートの始点の期間がとても狭くなるため、ビートを先に移動する余地がほとんどなくなります。PW設定を狭くすることで、より劇的なSlipの効果が得られます。
Shuffle
Shuffleジャックとノブは、Slipパラメータと組み合わせて使用します。Slipが特定のビートが時間的に先に移動される量をコントロールするのに対し、Shuffle はスリップが適用されるビートをコントロールします。デフォルトの設定は、1つおきのビート(Shuffleは最小値)です。Shuffleの値を上げると、3ビートごとにスリップし、続いて4ビートごと、5つ、6つと増え、ノブの操作範囲の特定の位置では7ビートごとにスリップが適用されます。この地点から最大値の範囲では、Shuffleは単一のビートではなく、ビートのグループを先にスリップさせるようになります。したがって、2つのビートのグループがスリップし、続いて3つのグループ、のようになります。
ノブはオフセットを設定し、ジャックへの信号はノブの値に加算されます。ノブが最小値の場合、ジャックへの0Vから5Vの信号でShuffle パターンの範囲全体をカバーできます。ノブが最大値の場合は、0Vから-5Vの信号で全範囲をカバーします。
Skip
Skipジャックとノブは、各小節からビートを間引くコントロールです。ここでの小節の概念は、8ビートに基づいています。’ x8 ‘未満を出力するジャックは、小節の始めの’ n ‘ビートと見なされます(例:S5ジャックは小節の始めの5ビートとして考慮されます)。 Skipが最小値の場合は、全てのビートが演奏されます。Skipノブの値を上げる、または正極のCVを適用することで、より多くのビートが間引かれます。
間引かれるビートのパターンは、SCM Plusのコード内のルックアップ・テーブルによって決定されます。 電圧ごとにルックアップ・テーブルの特定のパターンに対応しています。テーブルには128の項目があり、ビートのドロップ無しから8ビートのいずれかのドロップがそれぞれ、2ビートがドロップされる置換のそれぞれ、3ビートがドロップされる置換のそれぞれ、 8ビートの小節から4ビートがドロップされる置換の(ほぼ)それぞれの範囲です。8ビート全てをドロップするには、機能面で同一となるMuteを使用します。
ノブはオフセットを設定し、ジャックへの信号はノブの設定値に加算されます。ノブが最小値の場合、ジャックへの0Vから5Vの信号で Skipパターンの範囲全体をカバーできます。ノブが最大値の場合では、0Vから-5Vの信号で全範囲をカバーします。
Pulse Width
PW(Pulse Width)ジャックとノブは、8つの出力ジャックすべてに作用します。 PWが最小値の時、各ジャックは極めて細いパルスを出力します(1kHz以下の周波数では1ミリ秒)。これは大半の外部モジュールをトリガーできる十分なパルス幅です。PWノブが中央位置の設定でのパルス幅は50%、矩形波となります。この状態は、波形が低い期間と高い期間が同一となります。最大値の設定ではパルス幅はとても太くなり、波形が低くなるのは約300マイクロ秒だけになります。これは機能的に反転トリガーとなります。このように太いパルス幅を使用する場合、Slip/Shuffleパラメータの影響はわずかなものとなります。これはSlip/Shuffleが、パルス幅を変更せずにビートを時間的に先に進めるためです。したがって信号の幅がとても太く、パルスの間隔が相応に短い場合は、パルス間のギャップを完全に閉じずに動かす余地がなく、Slipの発生も少なくなります。PWを50%、またはそれ未満にキープすることで、Slip/Shuffleの効果が確認しやすくなります。逆の考え方として、PWはSlipパラメータそのものを変更することなく、Slipの量を減らす方法と言えます。
ノブはオフセットを設定し、ジャックへの信号はノブの設定値に加算されます。ノブが最小値の場合、ジャックへの0Vから5Vの信号でPWの範囲全体をカバーできます。ノブが最大値の場合では、0Vから-5Vの信号で範囲全体をカバーします。
4x Fast
4x Fastジャックはとボタンは、すべての出力の動作を4倍に速めます。この機能が有効の状態の時は、常にボタンがオレンジ色に照光します。4x Fast機能の状態を切り替えるには、ボタンを押すか、ジャックに2.5V以上の信号を入力します。ボタンがoffの場合、ジャックへの低い電圧が4x Fast機能を無効化し、高い電圧で有効化できます。ボタンがonの場合は、高い電圧で4x Fastを無効化し、低い電圧で有効化します。つまり、ボタンが押されるたび、またはジャックへの電圧の高低が変わるたびに、4x Fast機能の状態が切り替わります。
4x Fastのパッチ例:
SCM Plusの出力のひとつを4x Fast入力にパッチします(例としてx2出力)。ジャックがハイになることで、現在4x Fastジャック自身に送っている信号を含む、全ての出力の速度が上がり、信号が低くなると全てが遅くなります。この方法を使って、とても簡単にカオティックなリズム・パターンを作成することができ、PWを調整することでパターンを劇的に変更できます。
Mute
Muteジャックとボタンは、すべてのジャックをonにならないようにします。この機能が有効な時は、ボタンがオレンジ色に照光します。すでにハイの信号を出力中のすべてのジャックは、各々の通常のタイミングで動作を続けますが、出力信号がローになると、Mute機能が解除されるまでローに留まります。Muteの状態を切り替えるにはボタンを押すか、ジャックに2.5V以上の信号を入力します。ボタンがoffの場合、ジャックへの低い電圧でMuteを無効化し、高い電圧で有効化できます。ボタンがonの場合は、高い電圧でMuteを解除し、低い電圧で有効化します。つまり、ボタンが押されるたび、またはジャックへの電圧の高低が変わるたびに、Mute機能の状態が切り替わります。
Muteのパッチ例:
Muteの適用は、SCM Plusを使用しない時にモジュールの’ 光のショー ‘を停止する最も簡単な方法ですが、SCM Plusの出力のひとつをMuteジャックにパッチした場合、リズミカル、かつ反決定論的な方法でビートを間引く、興味深い効果を作成できます。このパッチでは、ジャックがハイになると出力が停止し、ジャックがローになると通常の演奏が再開します。
SCMの動作
SCM Plusは、直近の2パルス間の時間を測定し、その値を使って各出力ジャックの周波数を計算します。安定したクロックを使用した場合、x1ジャックでは同じ周波数のクロックを、x2ジャックは2倍の周波数のクロックを、x8ジャックでは8倍の周波数のクロックを生成します。
後述のFree Runジャンパーがインストールされている場合は、単純に2つのクロックパルスをクロック入力に送ることで、モジュールはそのテンポで恒久的に動作します。この’ タップテンポ ‘のアプローチには、本来、多少のテンポのずれが存在します。SCM Plusを他のクロックに同期したい場合は、共通の入力クロックを使用することが推奨されています。SCM Plusは、高速で変化するクロック信号も扱うことが可能であり、これには不規則な間隔で2.5Vの境界を交差するような、複雑な波形も含まれます。ジャックのうち3つ、x1, x2, x8はそれぞれ、入力クロックの倍数で常に通常のクロックパルスを生成します。これらのジャックはSlip, Shuffle, Skipの効果の影響を受けません。残る5つのジャック(S3, S4, S5, S6, S8)もまた、入力クロックの倍数でクロックを生成しますが、これらのジャックはビートに’ ラグ ‘を適用したり(Slip/Shuffle)、いくつかのビートを間引いたりします(Skip)。
モジュールにはS7ジャックがなく、このパターンはRotateノブまたはジャックを使うことでのみ作成できます。例えば、後記の表’ Multiply-by Amounts At Each Jack ‘では、Rotateジャックに0.6Vを加えるとS6ジャックがS7を出力すること、または2.9V以上を加えるとS8ジャックがS7のパターンを出力し、x8がx7を出力することを確認できます。S7が実装されなかった理由は、S8とx8のためのスペースを確保するためです。Slipの適用されたクロックと適用されないクロックを同時に演奏すると、特にSlipをゆっくりと変調して両方の出力を並行で聴いた場合、魅力的なフェイジングと可変シフトの効果が得られます。
クロックの保存
演奏中のテンポは保存し、次回の電源投入時に復元することができます(要Free Runジャンパー)。現在のテンポを保存するには、ボタンを押す間隔が0.5秒を超えないように、次の手順を実行します。
- ミュート機能は無効化し、Muteおよび4x Fastジャックのパッチは外します。
- Muteを押して離し、Muteを有効化します。
- 4x Fastを押して離します。
- 再度、4x Fastを押して離します。
- Muteを押して離し、Muteを無効化します。
Free Runジャンパーがインストールされた状態でモジュールの電源を入れると、最後に保存されたテンポが復元されます。なお、Inジャックにクロックがパッチされている、またはクロック・バス上で有効なクロックが動作している(およびClock Busジャンパーがインストールされている)場合は、そのクロックが保存されたテンポを上書きします。
Free Runジャンパー
モジュール背面には、Free Runとラベルされたジャンパーがあります。 このジャンパーがインストールされている場合、SCM Plusは外部クロック入力がなくても、Muteされていない限り動作します。 これはInジャックのパッチを外す、またはクロックを停止しても、モジュールが最後に受信したテンポの倍数のクロックを生成し続けることを意味します。これはオリジナルのSCMモジュールのデフォルトの動作です。Free Runジャンパーがインストールされていない場合、 入力クロックパルスがない状態が2周期経過すると、クロック出力が停止します。つまり、入力されるクロックが小節を示すために一秒ごとのパルスを持つ場合は、クロックが無い2小節(2秒)の経過で、モジュールのクロック出力が停止します。 このように、Free Runジャンパーがインストールされていない場合は、入力クロックの停止からSCM Plusが停止するまで、常に2小節の遅れが生じます。このラグが問題になる場合は、上流側のクロックが停止するたびにMuteジャックにトリガーを送ってください。
LEDの明るさを調整する
モジュールの背面にあるトリムポットを使って、LEDの明るさを設定できます。調整の際には小さなドライバーを用い、部品に損傷を与えないように慎重にトリマーを回します。
Clock Busジャンパー
クロック・バスは、ユーロラックの電源バスのGateピン上で動作する1:1のクロックです。この機能を使うことで、対応するモジュールが電源バスを介してクロック信号を送ることが可能となり、一台、または複数台のモジュールをこのクロックに同期できるようになります。 4msのMini PEG, DLD, QCDは、いずれもクロック・バス経由でクロックを送信することができます。Malekko Varigate 8+など、クロック・バスのクロックを出力できる他社製のモジュールも互換性がある可能性があります。SCM Plusの背面には、クロック・バス経由でのクロック受信を有効化するジャンパーがあります。このジャンパーがインストールされている場合、クロック・バス上のクロックパルスが、モジュールのInジャックに直接パッチされているかのように入力されます。Inジャックにケーブルがパッチされると、クロック・バスからの信号は 無効となります。