MUSICAL FEATURES
4ms Stereo Triggered Sampler (STS)は高音質のサンプルレコーダー/プレイバックモジュールです。STSでは2つのステレオファイルを再生しながら、別のステレオファイルに独立に録音していくことが可能です。microSDカードからは最大600までのサンプルがロードでき、1ファイルは4GBまで(16bit/44.1kHzのステレオwavなら6時間40分相当)対応します。サンプルファイルは96kHz/32ビットまでの様々なフォーマットのステレオwavファイルを使用できます。microSDカードが同封され、 Richard Devine, Robert Aiki Aubrey Lowe, Joseph Pailo, Paul Barker, Baseckらによるサンプルも収録されています。
またサンプルエディットモードではゲイン、トリムスタート・エンドポイント、再生ファイルのアサイン、コピー等、サンプルスロットごとの再生条件を変更や保存が可能です。この機能を利用すれば1つのファイル(例えばドラムループ)から個別のドラムヒットをスライスとして切り出したり、ゲインを増やしてアクセントのついたサンプルを別に作ってバリエーションを増やしたりすることが本体で可能になります。 これらの操作はWavファイルを変更することなく行います。
1V/Oct、サンプル選択、長さ、スタート位置などの全てのサンプルパラメータが電圧コントロール可能で、次のようなことがすぐに実現できます。
- ワンショット/ルーピングサンプラー
- ベーシックなグラニュラーシンセシスやタイムストレッチ
- End Outでお互いのチャンネルをトリガーするピンポンループ
- スライスを使用した電圧コントロールされたビートチョップ
- 録音のトリガー入力を利用した自動化サンプリング
- 長時間のパフォーマンス録音
2チャンネルの組み合わせや電圧コントロールを活用することで更に発展的なパッチをすることができるでしょう。
その他の特徴は次の通りです。
- 600サンプルまでロード可能(1バンクにつき10サンプル、60バンク)。バンクは10色とその点滅状態で識別され、直感的に認識できます
- 200以上のサンプルが収録されたmicroSDカードつき。Richard DevineやRobert AA Lowe、Baseckをはじめ様々なアーティストの作成したサンプルが付属します。
- microSDカード内のwavファイルはモジュールによって削除されることはありません。エディットモードによる編集の他、録音やコピーによってサンプルスロットにアサインされるファイルが変更された場合もWavファイル自体はそのままmicroSDカードに残ります。
- 非常にノイズやジッターの少ないデザイン
- 録音したオーディオはすぐにmicroSDカードに記録され、アクセス可能です。
- ステレオまたはモノモードで動作します。2つのBankボタンを長押しして切り替えてください:
・ステレオモード: 2つのチャンネルからのステレオのオーディオをミックスし、ステレオとしてLとRから出力します
・モノモード: 各チャンネルからモノとして出力されたオーディオを、それぞれLとRから出力します。 - オーディオの流し込みによるファームウェアアップデートが可能
マウスオーバーで各部の説明が表示されます
エディットモードでの機能表示も可能です。色の変わった箇所の働きが変わります
DETAILS
バンクの選択
STSではチャンネルごとに再生するサンプルスロットを選択することができます。サンプルは1つのバンクに10サンプルずつ収められ、同一バンク内のサンプルはノブ以外にCVでもコントロール可能です。60のバンクはバンクボタンの色と点滅を使って識別されます。
Bankボタンを押すと選択されているバンクがこの順番で変化します。また最初はボタンが点灯していますが、点灯しているPearlの時にBankボタンを押すと1回点滅するWhiteに移動します。逆方向にバンクを戻す際はReverseボタンを押しながらBankボタンを押します。このバンク選択方法では、サンプルの入っていない空のバンクはスキップされ、選択されません。空のバンクも選択したい場合は、Editボタンを押しながらBankボタンを押していってください。
また遠いバンク間の移動を素早く行うために、バンクのクイック選択機能があります。変更したいチャンネルのBankボタンを押しながら、左右のSampleノブを調整します。L側のSampleノブを回すと、そのBankボタンのチャンネルの再生するサンプルバンクの色(10色)を切り替えます。バンクの点滅状態は変えません。R側のSampleノブを回すと、そのBankボタンのチャンネルの再生するサンプルバンクの点滅状態を切り替えます。バンクの色は変えません。
エディットモード
エディットモードは、モジュール中央上部のEdit Sampleボタンを押しながら行う、サンプルスロットごとの非破壊編集機能です。Lチャンネルにロードされているサンプルが編集対象になります。パネル上金バックのキャプションがエディットモード時の各ノブやボタンの機能を示します。Start Positionやチャンネルボリュームのコントロールと異なり、ここで編集される情報はサンプルスロットごとに設定される情報となり、microSDカードに保存することが可能です。
以下のような操作が可能です。
- ゲイン調整: Edit Sampleボタンを押しながらRチャンネルのSampleノブを回すと、サンプルの再生ゲインを調整します。オリジナルの10%~500%までのゲイン調整が可能で、ゲインを上げすぎるとクリッピングが起きます。これはサンプルそれぞれにアサインされるゲイン量で、チャンネルボリューム調整とは異なります。
- 再生可能範囲の調整(トリミング): Edit Sampleボタンを押しながらRチャンネルのStart Posノブを回すと、Wavファイル上、Start Position=0での再生開始位置(Scrub Start)を調整することができます。またEdit Sampleボタンを押しながらRチャンネルのLengthノブを回すと、Length=100%での再生終了位置(Scrub End)を調整可能です。ノブは勢いよく回すとより長い時間距離を動かします。 下のコピー機能を組み合わせると、同じwavファイルからサンプルスロットごとに違う再生箇所をアサイン(スライス)することができます。また余計な無音部分、ノイズ等のカットにも使用できます。
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再生ファイルのアサイン変更: Edit SampleボタンとLチャンネルのReverseボタンの組み合わせで現在のサンプルスロットにアサインされたファイルを変更することが可能です。Edit Sampleボタンを押しながらReverseボタンを押すと、アサイン先ファイルを次の順番で変更します。
- 現在のフォルダー内をアルファベット順で選択
- どのサンプルスロットからも使用されていないWavファイルを順番に選択
- 全バンク中の全サンプル(使用されているwavファイル)を最初のバンクから順次選択
Edit Sampleボタンを押しながらReverseボタンを2秒押すと、バンクの最初のサンプルファイルを選択します。既にあるバンクの最初を選択している場合は1つ前のバンクの最初のファイルを選択します。またEdit Sampleボタンを押しながらReverseボタンを押しっぱなしにしていると最初のバンクの最初のサンプルファイルから順次再生します。
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(仮想的な)サンプルファイルのコピー: Edit Sampleボタンを押しながらRチャンネルPlayボタンを0.5秒押し続けると、エディットモードでの動作となり、 サンプルの仮想的なコピー&ペーストを行います。コピーは実際にファイルをコピーするのではなく、複数のサンプルスロットから1つのファイルにアクセスするようにサンプルアサイン情報を書き換えます(トリムポイントやゲイン等は同じファイルを指していてもサンプルスロットごとに変更可能です)。
Lチャンネルのサンプルスロットにコピー元ファイルをアサインし、Rチャンネルはコピー先のバンク・サンプルスロットをあらかじめ選択してください。ここでEdit Sampleボタンを押しながらこのボタンを0.5秒押すとコピーが完了し、Rチャンネルのスロットも同じファイルを参照するようになります。
- エディットした結果の保存: 上記のエディット結果、また録音されたファイルのアサイン情報は、その時点では一時的なもので、一度電源を切ると失われます。Edit Sampleボタンを押しながらLチャンネルPlayボタンを0.5秒押すことで、これらのサンプルエディット結果をmicroSDカードに保存し、次回電源投入時にもその結果が反映されます。
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エディットした結果の破棄(Revert): サンプルエディット機能で行った一時的な編集を破棄したり、前回セーブ時の状態に戻すことが可能です(セーブ前に限る)。
- Edit Sampleボタンを押しながら右Reverseボタンを0.5秒押すと行ったサンプルエディットをアンドゥすることができます。
- Edit SampleボタンとRチャンネルReverseボタンを押しながらLチャンネルBankボタンを2秒押すと、現在Lチャンネルで選択されているバンク内のサンプルについて行われた一時的編集を破棄し、前回セーブ状態に戻します。
- Edit Sampleボタンと右Reverseボタンを押しながら両方のBankボタンを4秒押すと、全てのバンク内のサンプルについて行われた一時的編集を破棄し、前回セーブ状態に戻します。
SDカード内のフォルダー構造とファイル・バンクのアサイン規則
microSDカードはモジュールに付属します。STSはアクセス速度の速いmicroSDカードが必要なため、別途用意する場合はUHSのクラス3カード(Uの中に3のマークがあるもの)を使用してください。カードのフォーマットはExFATが最良ですがFAT32でも動作します。またBusy LEDが点灯・点滅している時はmicroSDカードをSTSから抜かないでください。
- microSDカード直下のフォルダーがそれぞれ1つのバンクになります
- 各フォルダ直下に、各バンク内に入れたいWavファイルを入れます(サブフォルダは無視されます)
- ファイル、フォルダ名には日本語(全角)の使用はおやめください。またフォルダ名、ファイル名合わせ80字を越えるとSTSに認識されません
- バンクやファイルはフォルダ名、ファイル名のアルファベット順にアサインされます。フォルダ内に10を超えるファイルがある場合もアルファベット順でアサインが決まります
- フォルダ名の先頭にバンクの色の名前と点滅回数をつけるとフォルダはそのバンクに優先的にアサインされます。”Orange~”はOrange常時点灯バンク、”Orange-1~”だとOrangeが1回点滅するバンクにアサインされます。
- Wavファイルは32ビット浮動小数点、16/24/32ビット符号付、8ビット符号なしのビットレートが可能、サンプルレートは8kHz~96kHzまでのファイルに対応します
- microSDカードのトップフォルダには__Sample List__.htmlというファイルができ、アサインされているサンプルのファイル名や長さが表示されます。コピーして携帯等で閲覧するのにも使えます
- _STS.systemフォルダーはエディットの結果などが格納されています。以前のサンプルアサインやゲイン、ループ範囲情報などのエディット結果を保存しておくにはこのフォルダのバックアップをとっておいてください
録音の手順
録音を行うには、まずRECボタンを押し続け、録音待機状態(アーム)にします。録音したいオーディオをRECORD入力にパッチします。モノの場合はLeftにのみパッチしてください。その後RECボタンを押すと実際に録音が始まります。録音を止める際もこのボタンを再度押します。録音の開始、停止はトリガー入力を用いて行うことも可能です。
録音されたwavファイルは、中央部の録音Bankボタンと録音Sampleノブで設定したサンプルスロットに自動でアサインされます。録音Bankは、電源投入時にはサンプルが1つもアサインされていない最初のバンクに自動でアサインされますが、通常通りBankボタンを押すことでバンクを変更可能です。 また録音ファイルのアサイン先スロットに元々別のファイルがアサインされていると、そのアサインは録音時点で解除されますが、ファイルが削除されているわけではありません。上述エディットモードでのアサイン変更により、再度アサインしなおすことも可能です。またアサイン結果はその時点では一時的なもので、一度電源を切ると失われます。サンプルエディットのセーブ機能を使用することでアサイン情報がmicroSDカードに保存されます。
LやRのチャンネルのバンクを録音したバンクにすぐ移動するには、録音Bankボタンを押しながら移動したいチャンネルのBankボタンを0.5秒押せば録音バンクにワープできます。
コピー機能を用いたスライス作成例
- 1. スライス元のサンプルファイル(ドラムループ等)をLチャンネルにロード
- 2. Rチャンネルに、スライスを作成したいバンクをロードします。Editボタンを押しながらBankボタンを押せばサンプルが全くないバンクも選択することが可能です。
- 3. Rチャンネルのサンプルノブを、最初のスライスを入れたいスロットに合わせます
- 4. Editボタンを押しながら右チャンネルPlayボタンを0.5秒押すと、右のサンプルスロットに左チャンネルと同じファイルがアサインされます
- 5. コピー先のサンプルスロットを変えながら、作りたいスライスの数だけLからRにコピーを行います
- 6. 新しく作ったスライスの元になるサンプルを加工する為、LチャンネルもRチャンネルと同じバンクにします
- 7. Lチャンネルで先ほどコピーしてきたサンプルを選択し、サンプルエディット機能を用いてサンプルファイルの一部(1つのドラムヒット)を切り出し、ゲイン等調整し、これをコピーしてきた全てのサンプルで行います
- 8. これらのスライス編集が気に入ったら、Editボタンを押しながらLチャンネルPlayボタンを0.5秒押し、結果をセーブします
システムモード
2つのPLAYボタン、2つのReverseボタン、REC、REC Bankボタンの6つのボタンを4秒押し続けるとシステムモードに入ります。
- Recボタン: 押すと録音ビット数を切り替えます。ボタンの色が青の時24ビット、赤の時16ビットです。
- LチャンネルPLAYボタン: 押すと、LENGHT=100%の時のPLAYボタンの役割を変更します。青の時はLENGTH=100%以外の場合と同様、サンプルのトリガー/リトリガーになりますが赤の時はサンプルの再生・停止をトグルします。(トリガー入力は常にトリガー/リトリガーで動きます
- RチャンネルPLAYボタン: 鳴らすサンプルを変更した時に元のサンプルの再生を続けるかどうかを切り替えます。緑色の時、新しいサンプルに切り替えると現在のサンプルの再生を止めます。赤の時はサンプル再生が止まりません
Firmware Update
ファームウェアのアップデートはダウンロードしたオーディオファイルをSTSのRECジャックから流し込むことで行います。4msのSTS商品ページの”Manual/Firmware”タブから最新のファームウェアwavファイルをダウンロードし、以下の手順でアップデートを行ってください。
- 1. 全てのケーブルをSTSから抜いて電源を入れます
- 2. 2つのPLAYボタン、2つのReverseボタン、RECボタン、REC Bankボタンを4秒押し、システムモードに入ります
- 3. 2つのバンクボタン、REC、REC Bankボタンを4秒押します。ライトが変わるまで押し続けてから離します
- 4. 左Playボタンが緑になるはずです。左Reverseボタンが緑になっていれば、1度押してブートローダーをリスタートします。間違ってブートローダーに入っている場合はPlayボタンが緑の時に押して抜け出すことができますMonitorとBusyのライトが交互に点灯します
- 5. コンピューターやスマートフォンのオーディオ出力を左のRecordジャックに接続します。ステレオ、モノどちらのケーブルでも構いません。
- 6. 左のOutジャックから音を聞くこともできます(音が大きいので注意してください)
- 7. コンピューター側のソフトやハードの音量設定を100%にします。通知音等は全てOFFにしてください
- 8. ファイルの再生を開始します。LEDがいくつか動き出します。
- 9. ファイル再生の終わりより前に音が止まったらエラーです。Reverseが緑に点灯し4つのLEDが点灯します。次のように対応してください
a. ファイルを止めて最初に戻します
b. ケーブルがきちんと接続されているか確認します
c. Reverseボタンを押すとLEDが消えてPLAYが緑に点灯します。
d. ファイルの再生を再び開始します - 10. ファームウェアファイルが正しくロードできれば、STSはビープ音を出して再起動します